『神の真似事をしてはいけない』、バタフライエフェクト《感想》

人から面白い映画だと薦められたので観た作品。
何かあらすじ聞いて、まどマギのほむら男性版みたいな話に思ってしまった。

まぁ、話の流れや結末といい、似てる所はあるのかもしれないね。
まどマギのほむらと、この物語のエヴァンのやってる事や目的がほぼ同じなのだから仕方ない。

所々の描写が良かった。
過去に飛んで、ちょっと変えたら未来が悲劇的に変貌してく所とか。
最初謎だった場面がパズルのピースが埋まるように展開されてく描写が秀逸だったと思う。

ただ、物語として綺麗にまとまってる分、こじんまりした印象として見えてしまう。
これは、『過去を変えてやり直す』というマイナス思考から始まり展開される物語の構造上仕方ないのかもしれないけど。

過去を変えたいなんて思う人は、だいたいが内向的で視野が狭く、偏執だったりするしね。
少なくとも、その時々を真剣に生きてきた人、日々の積み重ねで今がある事を心から理解する人、現状に充たされてる人は過去を変えたいなんて思ったりする事はほとんど居ないだろう。


そう、主人公のエヴァンという男性は内向きな人間なのだ。
子ども時代の描写も、大人になってからの彼も基本的に周りに埋没(してるように見える)しつつ、漂うような流されるような行動しか取ってない。
大人になってからの描写は記憶の穴埋めと、過去に飛んでは一部の書き換えばかり。

周りの友達、母親、過去の父親など、エヴァンをたしなめているのにも関わらず、彼はひたすら過去に飛ぶ。
良い歳した男性が大切な女性を救う為とはいえ、今をないがしろにして周囲の人たちの言葉を無視する。

個人的に云うなら、とても彼に共感出来なかった。
そもそもの発端は彼が大切な女性との約束を守らなかった事や、自分の目的の為に彼女を精神的に追い詰めた事が原因なのだし。
子ども時代のトラウマをほじくり返されたら誰だって嫌だろ。
ましてや父親にいたずらされた過去を持つ女性だという点を踏まえて、エヴァンはケイリーに対して慎重に接するべきだったと思う。


どうでも良いが、性的な描写が苦手な私は所々飛ばしたくなるシーンがあるのは困る。
アメリカ映画にゃ濃厚なラブシーンが付き物だけど、それやられると下品に感じて萎える。
アメリカのお国柄や社会性が見えるのも嫌だわ。
ちょっと道踏み外すだけで、売春婦にならざるをえないなんて嫌な現実。

一番嫌だったのが『映画史上最も切ないハッピーエンド』という謳い文句。

どこが?
エヴァンはケイリーが他の男のものになっただけで、自殺するような男性だよ。
ケイリーと一緒になれない未来をそんな簡単に受け入れられるものかな。

それと、ケイリーに酷い言葉を云う事で変えた過去によって、起こる悲劇がケイリーとすれ違い他人のままってだけなのも気になる所。

本当は描写されてないだけで、どこかで起きてるんじゃないの?
父親が神の真似事をするなと云ってたけど、これって神の真似事だよね結局。

本編は美談だけど、ストーカーエンドが彼にはぴったりな気がする。


何にせよ、ハッピーエンドかどうかは視聴者側に決めさせて下さい。
その謳い文句がなければ、もっと純粋に物語に浸れたのに。


ただひとつ良かったのは、ほむらの行動原理(心理)を追体験出来た事かな。
きっかけは些細な事だけど、繰り返す度に相手に執着してくっていう。
バタフライエフェクトは、どうすればハッピーエンドにたどり着けるのか、その答えが単純過ぎて『考える』には至れなかった。

私は、どうしたらこの結末にたどり着けるのか考えるのが好きで、そういう考える旨みがある物語が大好きだから。


以上、感想終わり。